【わたしのアンネット】-9-
ロシニエールの冬は長く、そして厳しいものでした。
そんな折、モントルーからルシエンの姉マリーが久しぶりに実家に帰省してきました。
マリーは久しぶりの家族団らんとなった食卓で、自分が働くモントルーのホテルに骨の治療の名医ギベットという人物が泊まっている事を語ります。
ルシエンは『骨の治療の名医』という言葉を聞き、そのことをマリーから詳しく聞くのですが・・・
「無理よルシエン。先生は明日にはローザンヌに帰ってしまうし、それに治療といっても治療費はどうするの?きっとアンネットの家の牛を全部売っても足りるかどうか・・・」 しかしルシエンには希望がありました。それはペギン爺さんです。ペギン爺さんは以前ルシエンに語りました。
「ワシは盗んだ金を返すために金を貯めている。もちろん返す当てなどないが。だが本当に必要としている人が現れたら、ワシはその金をやってもいいと思っている」 ルシエンは意を決し、モントルーに向かう旨を書いた手紙を家に残し、夜中ペギン爺さんの山小屋を訪れます。
ペギン爺さんはルシエンの口から出た「ギベット先生」という名を聞くと涙を流し、黙ってルシエンに貯めた全てのお金を手渡すのでした。
目指すはモントルー。ルシエンは一人峠に向かいます。
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置手紙を発見したアンネットたちは必死でルシエンの消息を確認しようとしますが、猛吹雪の中では自分たちの身すらも危険な状況になり、遂には彼の勇気と決断、そして神の加護を願うのみとなりました。
愛には恐れがありません。全き愛は恐れを締め出します。なぜなら恐れには刑罰が伴っているからです。恐れる者の愛は、全きものとなっていないのです。 私たちは愛しています。神がまず私たちを愛してくださったからです。 ※新約聖書 ヨハネの手紙 第1 4章より抜粋 |
「イエス様が愛してくださっていることを心の底から信じていれば、イエス様は必ずルシエンを守ってくる。ルシエンを必ず・・・」 何度も倒れ、傷つき、立ち上がり、遠くから見守ってくれている全ての人たちの願いと共に、そして何ものをも恐れなかったルシエンは遂に峠を越え、ローザンヌのギベット医師の元にたどり着いたのです。
| ◆このルシエンの命を賭した行為は彼を取り巻く全ての人たちに幸福をもたらしました。 ダニーの足の手術が成功したのは言うまでもありませんが、キベット先生がペギン爺さんの残した息子であったことも、そして二人が過去の償いと赦しを清算し、手を取り合ったことも、全てルシエンと共にあったイエス様の導きであったのです。 |
春・・・。雪解けと共にルシエンの心の闇は消え去りました。
ダニーの足はアンネットとルシエンの友情のように完全に治ったのです。
「ほらぁ、お姉ちゃん、ルシエン、早くしないと置いて行っちゃうよ」
「よぉーしダニー、負けないぞぉ!山小屋まで競争だ!」
「あぁあぁ、ダニー!そんなに走っちゃ危ないわよって・・・ちょっと待ってよぉルシエ〜ン」
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